教育に社会的コストをかけよう

今月の上旬に,貸金業法改正10周年の集会に参加してきました。
「貸金業?」,奨学金と関係あるの? と突っ込まれそうですが,貸金業法改正シンポでも奨学金の問題が取り上げられていました。

民間資本が入った今の機構は,教育の目的での奨学金貸与であったはずなのに,『教育目的』よりは貸金業としての『回収目的』が優先されている事例などの報告がありました。
取立は過酷であり,支払督促・訴訟などを簡単に利用するだけでなく,支払の協議をする際も,利用者の現在の経済状況などへの配慮が乏しく,とても残念に感じました。

最近は,貸金業者よりも,市税の取立だったり,奨学金の取り立てが厳しく,中には違法なものもあるとの報告もこの集会で聞き及びました。
私の経験でも,奨学金の保証に関して,別居中の妻が代筆して保証書を夫に代わって差し入れた事例のように保証契約の効力が疑われるものもありましたし,どんなに経済的困窮を訴えても,簡単には減額してもらえない事例もあり,貸金業者よりも取立が厳しいのではないかと思うほどです。
 
このような過酷な取立の体質を改めていただく必要性を強く感じるところですが,そのためには,教育制度の在り方を根本から見直す必要があるのではないでしょうか。

北欧などでは,学費の負担は日本と比べると,圧倒的に少額です。
教育に費用を掛けた方が,社会的なコストとして合理的であるとの判断もあると思います。
経済的に困窮している世帯等に,高金利・過酷取立を行ったことを契機に貸金業法の改正運動が起きましたが,貸金業の金利規制や取立規制だけでなく,奨学金制度を初めとする,社会保障を充実させ,教育レベル・生活レベルを底上げすることこそが,重要ではないかと感じています。
給付型の奨学金制度や学費に対する国の助成の推進をし,貸与型の奨学金制度についても,経済情勢によって,弾力的な猶予・免除を利用者に認める舵取りをし,過酷取立を止めさせる制度・運用をして欲しいものです。

埼玉奨学金問題ネットワーク
会員 弁護士 久保田和志
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