日本学生支援機構(以下「機構」)は、返済(機構では「返還」という)開始後6か月経過時点で延滞3か月以上、返済開始後6か月以降は延滞3か月の時点でブラックリスト(機構は平成20年11月に全国銀行個人信用情報センターに加盟)に登録しています。
平成21年度以降、機構の奨学生として採用されるには、「個人信用情報の取扱いに関する同意書」の提出が必須となり、それ以前に返済されている方については、任意で同意書の提出を求めています。
機構は、ブラックリストに登録された場合の不利益についても説明したうえで、登録する理由として、延滞者の多重債務化の防止のためとしていますが、一度登録された情報は、延滞を解消しても登録され続け、返済完了後も5年登録され続けます。
ところが、以下のような機構の誤ったブラックリストへの登録が明らかになっています。
(1)半年賦分の入金が毎月必要とみなし、月賦分のみでよい月も一部しか入金がない、という誤った情報を登録、
(2)延滞中で一部入金しているにもかかわらず、未入金扱いとして誤登録
個人信用情報センターには上記(1)、(2)の合計673件(632名)(※件数は債権数)について、誤った内容の入金情報を登録していました。
当該入金情報が参照可能だった期間は、平成26年10月6日~平成27年9月4日です。この期間中に、個人信用情報センターの加盟会員である金融機関等から照会があり、ローン契約のお申し込みなど信用情報を用いた取引に影響が生じた可能性がある件数は28件(26名)(※件数は債権数)です。
以下略
(2015年09月17日の機構の報道関係者へのリリースより抜粋)
「ブラックリストに登録」することを借りる前に予告することが必要ですか?
機構は、「最近、JASSOの奨学金事業に関し、様々な報道や出版等がなされていますが、これらの中には、誤解に基づくものも散見されます。…『奨学金を利用して大学等で学びたい』と考える学生・生徒の皆さんが過度に不安を煽られ、進学や学業継続を断念してしまわないか、JASSOではこのことを最も懸念しています。」とHPに掲載し資料を提供していますが、
「ブラックリストに登録されると完済後5年間も登録され続け、中には誤った内容の登録がされる。」
「借入金以上の返済をしても、延滞金の支払いにあてられ元本が減らない。」
「法的な保護を求めると、それを理由に制度の利用を制限する。」
などの機構の姿勢に不安を持っている方も多くいます。
「我が国の将来を担う若者たちの学びと成長を見守っていきます。」いう機構の理念実現のため、「借りる時、返す時」それぞれの事情に向き合ってほしいものです。
埼玉奨学金問題ネットワーク
事務局次長 司法書士 安野憲起