延滞金再考

奨学金の相談を受けていると、「延滞金が膨れあがっていて、返せない」という声に接することが多くあります。

「借りたものは返さなきゃいけないし、返したい。ただ、借りた金額が延滞金で倍以上に膨れ上がっていて、とても返せない。なんとか延滞金だけでもなくしてもらえないか。」
切実な主張だと思いますし、共感できる主張です。

ふつうの金銭の貸し借りであれば、延滞金がつくのも分かります。けれども、奨学金にも延滞金がつくのであれば、これはもう奨学金とは名ばかりの単なる金銭貸借だと思います。

ところで、日本の奨学金は、本当に「名ばかり」の、単なる金銭貸借なのでしょうか。
法律上は、少なくとも、違います。

独立行政法人日本学生支援機構法という法律には、「延滞金」という文字は一度も出てきません。延滞金はもちろん、利息すらない第一種学資金と、延滞金はないが利息はある第二種学資金の定めがあるだけです。

そもそも、機構法3条は、同機構の目的として、営利目的ではなく、教育の機会均等を高らかに宣言しています。

法律上には、崇高な理念が掲げられており、法律を読む限りは、とても単なる金銭貸借には見えません。法律上は、延滞金は存在していないのです。

では、なぜ日本学生支援機構は延滞金を請求しているかというと、機構法に関する文部科学省令で、延滞金の請求が定められているからです。
ただし、この省令は、法律の基本的な態度とは相反しているように見えます(参考:最判平成25年1月11日)。

延滞金の是非については議論のあるところですし、奨学金にも延滞金を課すべきだという考え方も一方ではあるでしょう。
しかし、もしそうであるならば、国民の代表が国会で議論した上で、すなわち文部科学省令ではなく法律で、延滞金の請求を明示すべきです。

延滞金問題の拡大を受け、政府は延滞金の利率を従来の10%から5%に引き下げました。このように、省令制定当初とは問題の状況も国会の議論状況も全く異なってきています。
このようなときは、法律の理念に立ち返り、速やかに省令から延滞金の請求条項を削除した上で、今一度国会で延滞金請求を明示する機構法改正の是非を議論することが求められていると考えます。

埼玉奨学金問題ネットワーク
会員 弁護士 平田明之
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