奨学金問題とは?

奨学金問題はなぜこれだけ深刻になったのか。
奨学金問題対策全国会議より転載


70年代半ば以降、授業料の値上げが繰り返され、我が国の大学の学費は世界で最も高いレベルになってしまいました。

他方で、家計の収入は90年代以降減少を続けており、大学に行くためには奨学金に頼らざるを得ない人が多くなっています。今や、大学学部生(昼間)の約50%が何らかの奨学金を利用し、約3人に1人が機構の奨学金を借りるまでになっています。

●ほとんどが貸与型
諸外国では奨学金の相当部分が給付型であるのに対し、我が国の奨学金のほとんどは貸与であり、機構の奨学金は全部が貸与です。

●利息と延滞金が大きな負担
機構では、当初、無利子の奨学金(第1種)の一時的な補完措置とされた有利子の奨学金(第2種)が、拡大を続け、今やその事業予算は無利子の3倍です。延滞金の利率も年10%と高く、返しても元金が減らないケース少なくありません。

●不安定・低賃金労働の拡大
他方、非正規雇用等の不安定・低賃金労働の拡大等により、卒業して安定した収入を得て奨学金を返済できる環境は大きく崩れています。機構の奨学金の3か月以上の延滞者のうち、46%の人が非正規労働者又は職がなく、83.4%が年収300万円以下です。

卒業後の仕事や収入を予測することは困難です。機構の奨学金では、返済困難に陥った人に対する救済手段があることはありますが、条件が非常に厳しく、運用上もさまざまな制限があり、救済手段としては極めて不充分です。以下はその一例です。

●返還期限の猶予 願い出により奨学金の返還を一定期間猶予する制度
・低収入(給与所得者の場合、年収300万円以下)の猶予期限は5年間の上限あり。
 →それを過ぎるとどんなに収入が低くても使えない。
・延滞金がある場合には解消しないと利用できない。
 →生活保護受給中でも、延滞金がある場合はそれを支払わないと、猶予が使えない。

●延滞金減免 延滞金の全部または一部を免除する制度
・借主が死亡して保証人が返還する場合など、極めて限られた場合しか使えない。
・延滞金が発生している場合には使えない。

●返還免除 奨学金の返還の全部または一部を免除する制度
・自分でそしゃくができない、言語の能力を失っている、常に床について複雑な看護を要する など、ごく限られた場合にしか認められない。
・回復の可能性があるとして、まずは何年か猶予を利用するよう言われ、申請自体をさせても らえないケースがある(障害1級、全上下肢麻痺が2年続いたケースでの実例)。
・免除事由発生前に、延滞金があると認めない(障害1級、無職の人の実例)。

★これらの救済手段は十分に周知されていないため、利用できることを知らないまま延滞金が発生し、結局、制度を利用できなくなるケースも少なくありません。

利用者の返済が困難になっている状況に反して、機構は「金融事業」としての回収強化策を推進してきました。

●延滞1~3か月
本人や保証人への架電督促や通知(職場 連絡を含む)、サービサー(債権回収業者)への回収移行や個人信用情報機関(いわゆるブラックリスト)への登録を予告。

●延滞4か月
回収をサービサーに委託。

●延滞9か月
ほぼ自動的に裁判所に支払督促申立て。

●ブラックリストへの登録
2010年度からはいわゆるブラックリスト への登録が開始。2年間で登録件数は1万件を突破。

●返済能力を無視した執拗な取立て
機構の債権回収は極めて執拗で、借り手の返済能力を無視した、無理な支払いを求められることが多いのが特徴です。借り手に法律的な知識がないので、時効にかかった奨学金も請求し回収しています。

機構の奨学金を利用するには、保証料の負担を覚悟で機関保証を利用する場合以外は、連帯保証人と保証人を求められ、多くの場合、連帯保証人は親、保証人は親戚です。
そのため、救済制度の不備のため、支払いができない人が自己破産をしようとしても、保証人へ請求がいってしまうことをおそれて、無理な支払いを続けるケースが後を絶ちません。