東京新聞から取材があり、記事(「延滞率公表から一年 日本学生支援機構の今」2018.5.27日)になりました。
この記者は日本学生支援機構の延滞率の公表に疑問を持ち、なぜそうするのかから始まり、丁寧に取材してくれました。この記事にありますように、延滞率は氷山の一角です。延滞者より一般猶予者という返済困難者に目を向けてくれたのは良かったと思ってます。
猶予者は、主に経済的理由で返済したくともできない奨学金利用者です。その数は滞納者を上回り、15年度の滞納者は三万一千八十四人に対し、猶予者は五万七千三百七十三人です。それで計算すると延滞率は平均で1.4%ですが、猶予者を加えますと4.1%もの人が返済していないことになります。
私自身は、批判を受けるのを承知で言いますと、延滞率の公表にそれほど否定的ではありません。もちろん、こんなことに手間暇かけるより、日本学生支援機構はすることがあろうかと思ってますが、大学も奨学金の返済問題に真剣に関わっているとは思えないからです。延滞率の高低で単純に大学の対応を評価出来ませんが、大学の努力不足は否定できません。
私学の授業料の高さ、これは私学単独でどうにかなるものではありませんが、それが利用金額の高さに直結して返済困難者を増やしてます。私の所属した大学程度しか知識がないのであまり一般化できませんが、私の所属した大学の指導は、授業料の支払ができないなら8万円ではなく、12万円借りたらというものです。大学側も減免など努力すべきという声を上げても相手にされません。卒業して半年経過してから返済が始まりますから、大学は卒業後のことは知らないで済むのです。
一部の大学は、返済について在学中から丁寧に指導して成果を上げています。ほとんどの大学は、年一回形式的な説明会で済ましています。日本学生支援機構の奨学金の恩恵を最も享受しているのは、学生に高額な借金をさせて授業料を払わせている大学です。その責任を痛感して、大学は奨学金問題で加害者側だという意識が必要です。
埼玉奨学金問題ネットワーク代表・聖学院大学講師 柴田武男