埼玉奨学金問題ネットワーク

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埼奨ネットブログ

声を上げ続けることが必要

「奨学金問題対策全国会議」設立4周年集会が4月22日開催されました。
この4年の間に、日本学生支援機構奨学金を巡る社会の状況は大きく変わりました。
4年前、声を上げることで、それまで表面化しなかった返済時、回収時の過酷な実態がマスコミ、国会、学校現場等で取り上げられ社会問題化し、超党派で「改善」の検討がされるようになりました。

改正、検討内容については多くの問題も継続されていますが、猶予期間、損害金の割合などの改善がされました。
所得連動型、給付型奨学金の導入などが検討されました。

「大学進学を諦めた」「結婚や出産は無理」「希望する職種では奨学金が返済できない」など奨学金がもたらす現実は社会の損失となっています。

理念なき「日本学生支援機構奨学金の制度と姿勢」が問われています。
4年前、声を上げることが無かったら、何の疑問も持たずに「奨学金」という金融事業での犠牲と社会的損失を拡大させ続けていました。

まだまだ改善の必要があります。
「埼玉奨学金問題ネットワーク」は「奨学金問題対策全国会議」設立後6か月後に設立しました。
声を上げ続けることが必要です。

埼玉奨学金問題ネットワーク
事務局次長 司法書士安野憲起

延滞金再考

奨学金の相談を受けていると、「延滞金が膨れあがっていて、返せない」という声に接することが多くあります。

「借りたものは返さなきゃいけないし、返したい。ただ、借りた金額が延滞金で倍以上に膨れ上がっていて、とても返せない。なんとか延滞金だけでもなくしてもらえないか。」
切実な主張だと思いますし、共感できる主張です。

ふつうの金銭の貸し借りであれば、延滞金がつくのも分かります。けれども、奨学金にも延滞金がつくのであれば、これはもう奨学金とは名ばかりの単なる金銭貸借だと思います。

ところで、日本の奨学金は、本当に「名ばかり」の、単なる金銭貸借なのでしょうか。
法律上は、少なくとも、違います。

独立行政法人日本学生支援機構法という法律には、「延滞金」という文字は一度も出てきません。延滞金はもちろん、利息すらない第一種学資金と、延滞金はないが利息はある第二種学資金の定めがあるだけです。

そもそも、機構法3条は、同機構の目的として、営利目的ではなく、教育の機会均等を高らかに宣言しています。

法律上には、崇高な理念が掲げられており、法律を読む限りは、とても単なる金銭貸借には見えません。法律上は、延滞金は存在していないのです。

では、なぜ日本学生支援機構は延滞金を請求しているかというと、機構法に関する文部科学省令で、延滞金の請求が定められているからです。
ただし、この省令は、法律の基本的な態度とは相反しているように見えます(参考:最判平成25年1月11日)。

延滞金の是非については議論のあるところですし、奨学金にも延滞金を課すべきだという考え方も一方ではあるでしょう。
しかし、もしそうであるならば、国民の代表が国会で議論した上で、すなわち文部科学省令ではなく法律で、延滞金の請求を明示すべきです。

延滞金問題の拡大を受け、政府は延滞金の利率を従来の10%から5%に引き下げました。このように、省令制定当初とは問題の状況も国会の議論状況も全く異なってきています。
このようなときは、法律の理念に立ち返り、速やかに省令から延滞金の請求条項を削除した上で、今一度国会で延滞金請求を明示する機構法改正の是非を議論することが求められていると考えます。

埼玉奨学金問題ネットワーク
会員 弁護士 平田明之

給付型奨学金

昨年12月、2018年度から給付型奨学金制度をスタートさせるという政府の方針が発表されました(2017年度から一部先行実施)。
内容は、住民税非課税世帯の大学等進学者を対象として、月2~4万円を1学年あたり2万人に給付する(児童養護施設を出たばかりの者には別に入学金相当額を給付する)というものです。

これを画期的だと評価する声がある一方で、給付額・対象者数が少なすぎる(住民税非課税世帯の進学者は全体で6万人を超えるとされています)、対象者を選ぶ基準が明確でない等の問題点も指摘されています。

私が気になったのも、対象者を選ぶ基準です。
国の指針によると、対象者となるのは、①高い学習成績、②教科以外の学校活動等で大変優れた成果、のいずれかの要件を満たす者とされています。
しかし、この基準では、家計を支えるためのアルバイトに追われ学業に専念できない生徒が対象者として選ばれるのは困難です。
経済的に苦しんでいる者ほど給付型奨学金の受給が遠のくというのはおかしな話ではないでしょうか。

そもそも、広く進学の機会を確保するという奨学金の趣旨からすれば、大学等で学びたいという意欲のある者には、成績等に関係なく奨学金が給付されるべきです。
限られた財源の下、給付額の引き上げもこれからの課題ですが、まずは対象者を住民税非課税世帯の進学者全員に広げ、上記のような基準で選ばなくて済むようになることを期待したいです。

今後、この給付型奨学金制度が、時の政府の意向や国の財政状況に影響されることなく、一歩ずつ着実に前進していくことを願うばかりです。

以上

埼玉奨学金問題ネットワーク
山田知輝

学びなおし奨学金

新しい年が巡り、また受験のシーズンがやってきました。
奨学金を得て、大学等に進学される方も多いでしょう

学校を終え、社会に出て何年かすると、「学生時代にもっと勉強しておくのだった」「資格を取るために学びたい」と思うことがあります。

そういう時の為に「学びなおし奨学金」があればよいなと思っています

この奨学金の申し込み資格は
①最後に学校を卒業又は中退してから3年以上経過していること
②学ぶことで、生活を、人生を、自分自身を変えたいと渇望していること

子供など扶養すべき人を抱えている場合は、学費以外に生活費の一部も支給されます。
無償ではなく返還義務がありますが、その条件は、卒業後5年間毎年収入の5%を支払う、というものになります。
これですと卒業後、経済的に上手くいかない場合でも、負担しなければならない金額は多くならない一方、経済的に大成功を収めれば、かなりの額を負担していただく事になります(金利計算にしたらとてつもない金利になるかも(笑) )

終身雇用は無くなる一方、大人になりきるのにはより多くの時間を必要とする今の社会です。
教育を終えて満を持して社会に出る、その後はリタイヤするまで働き続けるというより、学ぶこと、働くことの垣根を低くしましょう。

学ぶ➡働く➡考えが変わって学びたくなる➡学ぶ➡学んだことを生かして働く

人生がそんなサイクルで回れば、人としての幸福度が上がるような予感がするのです。

以上はあくまでも初夢の妄想に過ぎませんが。

一方現実に目を向ければ、奨学金を得て(借金を抱えて)無理して大学に進学することにどのような意味があるのでしょうか
確かに、高卒に比べれば、大卒のほうが職業選択肢は多いし、資格試験の受験資格でも有利に働きます。

でもそれって、ネクタイを締めた仕事にこだわっていませんか。
自分自身がネクタイとは無縁の現場仕事をしてきた経験から言えば、現場仕事は、たしかに夏はくらくらするほど暑いし、冬は手がかじかむほど寒いです
それだからこそ、仕事が終わった後の解放感は格別です。
この解放感は私の今の仕事の10倍くらいですね。

また、これは私の個人的な感想ですが、現場仕事の人間のほうが、ネクタイ族より心を病むことが少ないように感じています。
肉体的には疲労しますが、精神的な疲労は比較的少ないことが理由でしょうか

ネクタイを締めずに、農業で、漁業で、林業で、はたまた建築職人として、伝統工芸の職人として、料理人として、あなたの生きる場所はどこかにあるような気はしませんか

そして、その道を選んだあとでも、考え方が変わったら「学びなおしの奨学金」を使って、違う生き方を選択できるという世の中が来ればいいですね。

埼玉奨学金問題ネットワーク
平澤 純

教育に社会的コストをかけよう

今月の上旬に,貸金業法改正10周年の集会に参加してきました。
「貸金業?」,奨学金と関係あるの? と突っ込まれそうですが,貸金業法改正シンポでも奨学金の問題が取り上げられていました。

民間資本が入った今の機構は,教育の目的での奨学金貸与であったはずなのに,『教育目的』よりは貸金業としての『回収目的』が優先されている事例などの報告がありました。
取立は過酷であり,支払督促・訴訟などを簡単に利用するだけでなく,支払の協議をする際も,利用者の現在の経済状況などへの配慮が乏しく,とても残念に感じました。

最近は,貸金業者よりも,市税の取立だったり,奨学金の取り立てが厳しく,中には違法なものもあるとの報告もこの集会で聞き及びました。
私の経験でも,奨学金の保証に関して,別居中の妻が代筆して保証書を夫に代わって差し入れた事例のように保証契約の効力が疑われるものもありましたし,どんなに経済的困窮を訴えても,簡単には減額してもらえない事例もあり,貸金業者よりも取立が厳しいのではないかと思うほどです。
 
このような過酷な取立の体質を改めていただく必要性を強く感じるところですが,そのためには,教育制度の在り方を根本から見直す必要があるのではないでしょうか。

北欧などでは,学費の負担は日本と比べると,圧倒的に少額です。
教育に費用を掛けた方が,社会的なコストとして合理的であるとの判断もあると思います。
経済的に困窮している世帯等に,高金利・過酷取立を行ったことを契機に貸金業法の改正運動が起きましたが,貸金業の金利規制や取立規制だけでなく,奨学金制度を初めとする,社会保障を充実させ,教育レベル・生活レベルを底上げすることこそが,重要ではないかと感じています。
給付型の奨学金制度や学費に対する国の助成の推進をし,貸与型の奨学金制度についても,経済情勢によって,弾力的な猶予・免除を利用者に認める舵取りをし,過酷取立を止めさせる制度・運用をして欲しいものです。

埼玉奨学金問題ネットワーク
会員 弁護士 久保田和志

お金のせいで教育を受けられないのは悲しい

2016.11.28

私は、貧困家庭の中で育ちました。家庭内での嫌悪や葛藤などを感じながら、青春時代を過ごしました。
それでも、私は、東京都立大学に行くことができました。年間30万円程度の学費を全額免除してもらい、育英会のⅠ種奨学金をもらえたからです。

1980年代の話です。大学での成績は、5段階で平均3.5程度で、高校での成績は、10段階で平均6程度だったと記憶しています。
今思うと、東京都は、成績が特に優秀でもない自分に対し、よく学費を免除してくれたなぁと感謝感激しています。都民や市民には、足を向けて寝られません。
おかげさまで、明るく人生を生きられるようになりましたし、少しは一丁前なことを口にできるようになりました。

現在、給付型奨学金制度が議論されています。
貧困家庭の子どもは、塾や予備校にも行けませんから、学校で良い成績をとるのは困難です。成績の良し悪しだけを基準に給付型奨学金の受給資格を考えるのは疑問です。
頑張ろうとしている子ども、努力しようとしている子ども・・・がお金のせいで教育を受けられないのは、とても悲しいことです。
給付型奨学金制度を作る際には、この点をよく考えてもらいたいと望んでいます。

埼玉奨学金問題ネットワーク
会員 弁護士 小林哲彦

学ぶということ、支えるということ

現在、4人に1人は65歳以上といわれており、他方で、少子化の状況も変わっていません。
社会を支え、担っていくのは、子どもたち(若者たち)です。
子ども(若者)に、等しく学ぶ機会を与えることは、大切なことではないでしょうか。
親の経済力という子ども自身ではどうにもできないところを、社会全体で支えていくことは大切なことだと思います。
現在の奨学金は、利用した場合、そのほとんどは、返さなくてはなりません。
奨学金を返さなくてはならない不安は、とても大きな不安・負担となります。

繰り返しですが・・・社会を支え、担っていくのは、子どもたち(若者たち)です。
もう少し大切にしてもいいのではないかな・・・と素朴に思う今日この頃です。

埼玉奨学金問題ネットワーク
会員 弁護士 宮西陽子

俺は頑張って返した!

電通の過労死事件が話題になった時、ネットでは「俺はもっと残業してた!」等の意見が一部で見られました。これらの意見が問題の解決に役に立たない事は言うまでもありません。

一方、貸与型奨学金の返済に対し、「俺は頑張って返した!」といった反応も見られます。これらの意見が現に返済に困っている人、これから返済に困るであろう人の問題の解決に役に立たない事は言うまでもありません。

さらに60代の方が学生の頃であろう昭和50年の学費平均は、国立大で年4万以下、私立大で約18万円でしたが、2014年では国立大で約54万円、私立大で約87万円と大幅に増加しています。
一日に働ける体力・精神力は変わらない一方、返済額は大幅に増加しているわけですから、上記意見はますます的外れと言えましょう。

一方、下記のような意見については、正しいなとも思う部分はあります(個人の意見として)。

学費が高すぎるのが問題だから無償化すべきだ。 
収入格差≒学力格差問題への対策については、より投資効果の高い幼児期教育に力を注ぐべき(大学時点では手遅れだからやめろ)。
貸与型と知りつつ借りたのだから自己責任である。

とはいえ、これらの意見は、貸与型奨学金の返済に現に困っている人や、これから困るであろう人の問題解決にはつながらないという点では変わりません。
給付型奨学金の導入は、これから困る人の数を減らすことが出来るという点で解決策の一つであることは間違いないと思います。
もちろん、それだけでは足らないことも間違いないですが。

埼玉奨学金問題ネットワーク
会員 司法書士 鈴木友治

奨学金問題って、どうすれば解消されるのか?

もう結構前から、マスコミにも取り上げられている「奨学金問題」。
どうすれば解消されるんでしょうね。

例えば、「大学授業料を無償にすべきだ」とか、
「OECD加盟国中、給付型奨学金が無いのは日本だけ」とか、
「奨学金じゃなくて、これじゃただの学生ローンだ」とか、
「大学に行きたくて金を借りたんだから、返すのが当たり前」とか、とか。

奨学金については、みなさん、様々な意見をお持ちで、私は、上記の主張はいずれも正しいと思います。
奨学金の問題は、「奨学金」だけを見ていては(予算まで視野を広げたとしても)、解消されないものだと思いますので、色々な意見があって当然です。

でも、ただ意見を持っているだけでは、先には進みません。

時に、「教育」の意義について考えてみる。
教育する側と受ける側で考えも変わってきそうですが、例えば「する側」からすれば、「人を育てる」色彩が濃いような。
でも、「人を育てる」といっても、社会に目を向けると、それを「投資(人は、経営資源の根幹ですからね!)」と捉える企業もあれば、「コスト(人件費)」と捉える企業もあります。
もちろん、その両方という意見、折衷という意見、「育ててもらおうなんて甘い!」というスポ根的ご意見もあるでしょう。

どう捉えるべきなのでしょう。

時に、憲法第26条第1項を読んでみる(カタ過ぎる・・・)。
「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」とありますが、「その能力に応じて」とは、何を意図しているのか。
「ひとしく」とは、どういうことなのか。

どう捉えるべきなのでしょう。

時に、大学に進学することの意義を考えてみる。
時に、高校教育の在り方について考えてみる。
時に・・・

これまでに本ブログにアップされている内容と比較すると、ノリの違いに愕然としますが、この団体にも、色々な会員がいる(生物多様性?)ということで、ご容赦ください。

でも、上述したようなことを、飲みの場で同僚や知人と、ご自宅で家族と、どこで誰とでも結構ですから、少し話題にしてみてはどうでしょう。
意外と、会話が長く続いたり、熱くなったりするかもしれません。
その繰り返しによって、言論活動による人格の発展に繋がり(カタっ!)、問題意識が世間で共有されていき、民主政治への貢献に繋がり(カタ過ぎる)、奨学金問題の解消に至るような気がするのです。

埼玉奨学金問題ネットワーク
会員 司法書士 達脇清将

いろいろな奨学金

奨学金の代表格は日本学生支援機構が扱うものですが、これ以外にも、奨学金制度があることをご存じでしょうか。

日本学生支援機構の奨学金は、利息の有るものと無いものとあって、特定の場合に返還が免除される制度もありますが、基本的には返還しなければならないものです。

これに対し、他の団体が実施している奨学金の中には給付型(返還不要)のものがあります。

ちょっと調べただけでもたくさん見つかりました。
網羅することは不可能なので、埼玉県にゆかりのありそうなものを以下に挙げてみます(注:おすすめするというわけではありません)。
学生支援機構の奨学金との併用も可とされているようですね。

  • 【公益財団法人 ツツミ奨学財団】
    埼玉県内の大学に在学する学生又は埼玉県内の高等学校を卒業し県外の大学に在学する学生で経済的理由により修学が困難な学生に奨学援助を行っています。
    .
  • 【公益財団法人 埼玉学生誘掖会】
    原則として東京都内及び近郊の県に所在する大学の学部(大学院を除く)に在学する学生のうち、学費支弁が困難な学力優秀者に対して、奨学援助を行っています。対象者は埼玉県出身者の子弟に限るようです。

上記のような民間の給付型奨学金以外にも、例えば自治体によっては学生支援機構から借りた奨学金の返還を支援してくれる制度も用意されています。

  • 【福井県U・Iターン奨学金返還支援補助金】
    福井県外の大学で就学した人が福井県内に在住し、県内企業に5年間務めることで、最大100万円の支援が受けられるというものです。
    .
  • 【和歌山県中核産業人材確保強化のための奨学金返還助成制度】
    和歌山県内の製造業や情報通信業業に研究開発職・技術職として採用され3年間勤務した者に対して、奨学金の返還金(最大100万円)を助成する制度です。

他にもありますので、一度調べてみてはいかがでしょうか。

埼玉奨学金問題ネットワーク
会員 司法書士 松永賢一