機構はサラ金以下なのだろうか?機構の制度のせいで返してたくても返せない!

「機構の対応はサラ金以下だ」という意見に対し「利率はサラ金より機構の方が良いではないか?嘘をつくな」と言う人がいる。
しかし機構が酷いのは利率の件ではなく、回収の仕方なのであることを指摘したい。

機構の制度のせいで返したくても返せない、という状況が生じ、少なくない人々が苦しんでいる。「借りたものを返すのは当たり前」という主張を真っ向から否定するつもりはない。
ただし、もっと効率の良い回収法をとった方が、機構にとっても利用者にとっても良いのではないか?ということだ。

サラ金の回収法と大きく異なることは、機構は返済法について一切相談に乗ってくれない、ということだ。
例えば、月に2万円返済しなければならないとしよう。この場合、きっちり2万円返すか、特別な書類を提出して返済期間を2倍に伸ばした上で半額の1万円ずつ返す、という返済方法しか機構は認めない。

低収入に苦しみ1万円すらきついという人に対しては過酷な現実が待っている。
一応、貧困者に対しては申請すれば10年間の返済猶予期間がある(2013年までは5年間だけだった)。しかしそれを過ぎると一切の救済策は用意されていない。そもそも10年間も年収が300万以下である人がいきなり11年目から収入が増えるだろうか?結局10年後には自己破産という道しか残されていないのである。

実際に機構に相談すると「いくらだったら払えますか?」と聞いてくる。例えば、5千円だったら返せると言うと「その額で返済を始めてください」と答えてくる。これを聞くと良心的だと思うだろう。
しかしその先に落とし穴が待っている。一月あたり2万円から5千円を引いた差額の1万5千円が滞納とみなされ、それに年で5%(2013年までは10%)の延滞金が課されるのである。

機構の指示に従って少しずつ返済していたところ、ある日機構から督促状が届き、元金が減るどころか逆に延滞金によって借金が増えていた、という事態が待っているのだ。

以前、育英会時代は書類上延滞金がつくが、元金を返し終われば延滞金をチャラにする、という運用を行なっていた。つまり運用のレベルで十分生活困窮者にも返せるような対応を取っていたのである。
ところが、育英会が機構になり財政投融資を資金とし始めると、機構は延滞金を一切免除しなくなった。実際に、2012年3月の時点でホームページによると、機構の延滞金収入は4億円以上をあげている。

機構は、多くの場合、延滞が返済者の低収入によって起こることを把握している。
にも関わらず、救済措置を設けていない。延滞金含めてびた一文まけないし、交渉にも応じない。

サラ金であれば、多少の融通は利く。一月あたりの返済額に関しても相談可能だし、少なくとも元金さえ回収できればよし、とする場合もある。
100万返せと強引に取り立てた結果自己破産されては100万円の損になるので、それだったらせめて80万でも回収できた方が得と考えるのだ。資本主義に則ってできるだけ損を減らすような経営をするのである。

機構は、そのような掌は一切加えない。
取り立てるためサービサーに例えば60万払っても利用者から100万円取り立てようとする。自己破産を防ぐことより、決めれた通りの返済法を守ることを優先するのである。
サービサーにお金を払って、返済困難な人々から無理やり回収するより、そのサービサーに払うお金を使って、もっと利用者のための救済案は考えられないのだろうか?

そのことに関して、機構に文句を言うと、文部科学省に決められた枠内でしか機構は動けないので、個別の対応は一切出来ませんと言う。文部科学省は機構は国の組織ではなく独立行政法人なのでと言って対応してくれない。
つまり多くの人を自己破産に追いやり、多くの人の人生を壊しておいて、その責任の所在が曖昧なのだ。

機構は、借りたものを返さないで良いと考えるモラルハザードの心配があるから、と折に触れて発言するが、多くの人々の生活を破壊する行為はモラルに抵触しないのであろうか?

ここでモラルに関して一つの逸話を紹介しておきたい。
ナチスドイツで輸送部門の責任者だったアイヒマンやフランスの対独協力者だったパポンの裁判の話だ。彼らは、法廷で自分たちは上司の命令に従って忠実に仕事をこなしていただけで、何ら法を犯していない。一体、何の罪で裁かれるのか?と主張した。
しかし、結局、多くのユダヤ人を死に追いやった責任を問われて有罪となった。彼らに問われたのは「人道に対する罪」である。
確かにこの罪は戦中のドイツやフランスでは法制化されていない。まさに事後法であり、それによって裁かれたのである。
このことは、西洋の法体系には、書かれている法の範疇を超えたところにあるモラルを問う基準があることを示している。法律を犯していなくてもモラルに抵触すれば裁かれる可能性があるのだ。

機構の取り立てによって、多くの人が苦しみ、自己破産に追い込まれている。本人だけではなく、保証人となった親族の生活さえ破壊するケースもある。
また、2015年埼玉奨学金問題ネットワークのシンポジウムでとある弁護士の方が取り立てを苦にして自殺者が出たというニュースを伝えてくれた。このようなことを行っている機構のモラルはどこにあるのだろうか?

埼玉奨学金問題ネットワーク
会員 黒木朋興
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