高校における奨学金理解

現任校で今年3月まで、7年間奨学金の担当を続けた。
通常、どの学校でも校務分掌はおおよそ4年くらいをめどに代わることを原則としている。それを7年も続けたということは、よほど奨学金担当のなり手がいなかったということか・・・

どの学校にも必ず奨学金担当はいるが、どうもこの仕事は教師の仕事としてはしっくりこない。もちろん奨学金の大切さは認識している。
しかし、家庭の経済状態と学生支援機構を繋ぐこの仕事が、なぜ教師の仕事なのだろう。

教員経験が長い(=年齢が高い)ため、育英会時代の奨学金も知っている。もちろん利子などなく、教師になれば返済免除があった。それゆえ、教師がやるのは当然か・・・と思いつつ担当を続けた。
しかし、あるとき「独立行政法人・日本学生支援機構」と「日本育英会」が全く違うものであるということを認識した。なぜ、利子付き奨学金の仲介業務を教師がするのであろう・・・利子が支援機構に入るということは、この業務は金融業務なのではないか。

この疑問に答えてくれたのが、2014(平成26)年2月13日に校内の教員向けに実施した埼奨ネットの鴨田弁護士、柴田聖学院大学教授、安野司法書士を招いての研修会である。
2種奨学金は、民間資金としてインターバンク市場からも資金調達をすること。返済のできない若者は、ブラックリストに名前が載り、やがて取り立てが始まること。多くの若者が、奨学金の返済に苦しんでいる。「これは、かつて経験した消費者金融の時と同じ匂いがする。」という言葉は衝撃的であった。

「お金が無かったら、奨学金だね。」と気安く進路指導を続けてきた高校教師にとって、本当に衝撃的な研修であった。この研修は、やがて同じ年の5月23日、埼玉県高等学校社会科教育研究会の総会における講演につながった。
その後、いくつかの高校でも研修が開かれ、生徒向きの講演や保護者向けの講演が開催された。私も、いくつかの高校へ出向いた。なによりも、マスコミが取り上げるようになった。

わずか2年の年月で、学生支援機構の奨学金に対する認識は大きく変わった。
「できるだけ借り入れをしない状況を作ろう!」進路指導も、そういった言葉に変わった。

これからは、さらに前進だ。給付奨学金の創設に向けての理解と取り組み。
大きな変革に向けて、もう一度うねりを作らねば。
      

埼玉奨学金問題ネットワーク会員
高校教員  仲 野   研
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